期間限定『ウソ恋ごっこ』
「愛美、やめろ! 落ち着け!」


伊勢谷先輩があたしを守ろうとして、ますます強く抱き寄せる。


それを見た折原先輩の顔色がサーッと変わって、両頬がビクビクッと引きつった。


そして身を折るように握りこぶしを振り回して絶叫する。


「佐伯美空ぁ! あたしはあんたを絶対に絶対に許さない!」


鬼の形相と化した折原先輩は、今度は自分が座っていたイスを両手で掴んで頭上高く振り上げた。


ひええ! さすがにあれを思い切り投げつけられたら、シャーペンとか二穴パンチのレベルの被害じゃ済まない!


せめて受ける被害を最小限に抑えるべく、あたしはとっさに目を瞑って、体を固くして自衛した。


く、来るなら来い!


できれば来ないでほしいけどー!


「…………」


……あ、あれ?


なんも、来な、い?
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