期間限定『ウソ恋ごっこ』

おそるおそる薄目を開けたら、思わぬ光景が目に飛び込んできた。


なんと近藤先輩が、折原先輩から取り上げたイスを片腕で軽々と抱え上げ、もう片方の手で彼女の頭を上から力強く抑え込んでいる。


「いい加減にしろ。生徒会役員のくせに学校の備品を粗末に扱うな」


厳しい声でビシッと一喝した後、近藤先輩はやれやれといった視線をこっちに向けた。


「お前らもいつまで抱き合ってんだよ。おい司、こっち来てこの猛犬を鎮めろ」


「あ、ああ」


伊勢谷先輩が折原先輩に急いで近づくと、折原先輩が「司！」と叫びながらすごい勢いで飛びついた。


そして伊勢谷先輩の背中に素早く両腕を回し、思いっ切りホールドする。


あれはもう抱擁というより、格闘技の絞め技レベル。死んでも離さない感が必死すぎて、リアルに怖い。


ドン引きしながらふたりの様子を見てたら、折原先輩と目が合ってギクリとした。


涙で赤く潤んだ両目が、まるでホラー映画の特撮みたいにギリギリとつり上がっていく。


あまりの迫力に背筋がゾッと泡立って、おまけに全身に刺すような鋭い痛みを感じた。


イタタ！　痛い！　視線が痛い！


目からビームでも出てるんじゃないの⁉︎　この人！