期間限定『ウソ恋ごっこ』
もう打ち合わせは終わったのかな? 話し声は聞こえてこないけれど。


ドアに顔を寄せて部屋の中の音を聞こうとしたら、いきなり向こうからドアが開いてビックリした。


「わ!」


「うわ、ゴメン! 人がいるとは思わなくて……あれ? 美空ちゃん?」


開いたドアの向こうから、伊勢谷先輩が驚いた様子であたしを見下ろしている。


目を丸くしている表情は、普段よりもちょっと幼く感じて可愛い。


「美空ちゃん、どうしたの? なにか用?」


「は、はい。あの、先輩に大事なお話があるんですけど今大丈夫ですか?」


「うん。ちょうど誰もいないから中へどうぞ」


愛想よく笑った先輩が、ドアを大きく開いて中へ招き入れてくれた。


あたしの背中に大きな手をそっと当てて、優しく押しながらテーブルの端っこのイスをすすめてくれる。


それから、部屋にあったミニ冷蔵庫から缶ジュースを一本取り出して、あたしの目の前に置いた。


「どうぞ。俺のオゴリ」


「あ、ありがとうございます」


わー、先輩からジュースもらっちゃった。家に持って帰って家宝にしよう!
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