期間限定『ウソ恋ごっこ』
ホクホクしてお礼を言った後、ふっと話が途切れて、生徒会室に沈黙が流れた。


静かな空気を持て余して、制服の上着の裾を意味もなく指先でつまんだりしながら、微妙にアセる。


うぅ、どうしよう。話し出すきっかけがつかめないよ。


どんなふうに説明すればいいだろう。


やっぱり、料理ができないって事実を正直に説明するべきだよね。


そうでもなきゃ、先輩のお弁当係なんて名誉なお役目を辞退する事情なんて、とても理解してもらえないだろうし。


よし。すごく恥ずかしいけど、言うぞ!


こういう気まずいことは早めに済ませてしまうのが一番なんだ!


「あ、あのぉ」


あたしが決心して話し出すのと、先輩が口を開くのと同時だった。


「そういえば美空ちゃんにまだお礼を言ってなかったね。お弁当係を引き受けてくれてどうもありがとう」


そう言って先輩がペコリと頭を下げたものだから、あたしは口を半開きにしたまま、ピタリと固まってしまった。
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