高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
「じゃあ、花沢さんをもう」

「わかったわかった、今すぐに会社へ向かいなさい。

それで高崎さんに謝ってきなさい」

慌てた様子で言った部長に、
「花沢さん、行きますよ」

西口くんはそう言って、私の手を取った。

「えっ…ああ、はい…」

私が返事をしたことを確認すると、
「それじゃあ、失礼します」

西口くんは私の手を引いて、この場から立ち去ったのだった。

えーっと…私、昨日『高崎エージェンシー』に書類なんか出したか?

そう思って振り返って見るけれど、心当たりが浮かばなかった。

それよりも…と、私は手を引いている西口くんの背中に視線を向けた。

その背中をたくましく感じたのは、私の気のせいだろうか?

手を引いているその手がかっこいいと思ったのは、私の気のせいだろうか?
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