高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
「私、西口くんみたいな人間になりたかったな」

そう言った私に、
「えっ?」

西口くんは聞き返してきた。

「だって営業の仕事を希望してた訳じゃなかったのに、新規契約を何件か取ってきたじゃないですか。

顔もいいし、愛想もいいし、仕事もできるし、会社の人たちと上手にコミュニケーションを取ってるし…私、できることなら西口くんになりたいです」

そこまで言うと、紅茶を額に当てた。

冷たいそれを肌で感じていたら、
「返事を聞かせてください」

西口くんが言った。

「返事…?」

私は聞き返した。

「――俺で練習しましょうよ、花沢さん」

あの時と同じ声のトーンで、あの時と同じ言葉で、西口くんが言った。
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