高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
「お姉さん、今日はビールをいっぱい買ってますね。

パーティーでもやるんですか?」

「えっ、いや、その…あの、えっと…」

会計の途中でコンビニのアルバイト店員に話しかけられ、私は何を言えばいいのかわからない。

さっさとお金を払って会計を終えると、ビニール袋を手に持って逃げるようにコンビニを後にした。

「あそこのコンビニ、もう行かない…!

店員に顔を覚えられた、もう行かない…!」

泣きそうな気持ちでブツブツと呟きながら、私は早足で歩いた。

今日は土曜日、待ちに待った休みだ。

すっぴんに黒ぶち眼鏡、適当にまとめてひとつにくくった髪、緑色の学生ジャージ、“花沢”とデカデカと名前が書いてある体操服はグレーの大きめのパーカーを身に着けて隠している。

足元はヒールじゃなくてクロックス、そのうえ裸足だ。

これが私の家での顔である。
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