高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
「すみません、大丈夫ですか?」

ぶつかった男が話しかけてきた。

あれ、どこかで聞いたことがある声だな…って、そんなことはどうでもいい!

周りを見なかった私も悪いけど、大変なことになってしまった。

急いでしゃがみこむと、
「すみません、すみません、すみません」

「い、いえ…」

落ちたものを拾って財布の中に入れると、
「すみません、すみません、すみません、本当にすみませんでした」

相手の顔を見ることなく、逃げるようにその場から離れた。

「あっ、ちょっと、忘れ物!

ねえ、忘れ物!」

何かを言っていたような気がするが今は逃げることが先だ。

ああ、もう何をしているんだ…!

財布を落としたうえに小銭とかいろいろなものを床にばらまいて…恥ずかしい、もう2度と行けなくなっちゃったじゃないか!

「もう2度と会うことなんてないよね…」

そう自分に言い聞かせながら自宅へと帰った。
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