あなどれないね、世唯くん。
「5時間目ちゃんと授業出ないとね」
「……やだ、もっと……んんっ」
黙らせるように、さっきよりずっと乱暴に塞がれた唇は全然甘くない。
ずるい、ほんとにずるいこんなやり方。
「……糸羽はいい子だから聞けるよね」
悔しいけど、世唯くんにそう言われたら何も言い返せなくて、従順になるしかない。
ほんとは、もっともっとそばにいたいのに。
「……また明日もおいで」
甘い時間は、こうやっておあずけ。
ただ、この関係は何もいいものはない。
2人っきりでいるこの瞬間だけ、甘さで満たしてくれるだけで。
この空間を出れば、残るのは虚しさだけ。
恋人でも特別でもなんでもない。
わたしの気持ちは、出会った頃からずっと世唯くんにあるけれど、
世唯くんは違う。
『俺……忘れられない人がいるから━━━』
この恋は、ぜったいに叶わない。