あなどれないね、世唯くん。



完全に油断して藍野くんの名前を出してしまった。

知られたくない……世唯くん以外の男の子と2人で過ごしていたことなんか。


「……藍野クンが何?」

あきらかに声のトーンが数倍低くなった。
多分だけど、機嫌を損ねたような気がする。


「な、なんでも……ない」

「最近昼休み俺に会いに来ないのは藍野クンと一緒にいたから?」

「っ、」


イラついたのを隠すような口調で話す世唯くんだけど、全然隠しきれていない。


「へー、否定しないってことはそうなんだ」

すると、突然冷めたようにわたしの上からどいた。

さっき押し倒された身体をゆっくり起こす。

そして、少しだけ距離を開けて世唯くんの隣にちょこんと座る。


「いとは俺より藍野クンがいいの?」

試すようにこちらを見る瞳。
この答え次第で、世唯くんの機嫌も、これからの関係も変わるような気がした。

< 108 / 339 >

この作品をシェア

pagetop