あなどれないね、世唯くん。
完全に油断して藍野くんの名前を出してしまった。
知られたくない……世唯くん以外の男の子と2人で過ごしていたことなんか。
「……藍野クンが何?」
あきらかに声のトーンが数倍低くなった。
多分だけど、機嫌を損ねたような気がする。
「な、なんでも……ない」
「最近昼休み俺に会いに来ないのは藍野クンと一緒にいたから?」
「っ、」
イラついたのを隠すような口調で話す世唯くんだけど、全然隠しきれていない。
「へー、否定しないってことはそうなんだ」
すると、突然冷めたようにわたしの上からどいた。
さっき押し倒された身体をゆっくり起こす。
そして、少しだけ距離を開けて世唯くんの隣にちょこんと座る。
「いとは俺より藍野クンがいいの?」
試すようにこちらを見る瞳。
この答え次第で、世唯くんの機嫌も、これからの関係も変わるような気がした。