あなどれないね、世唯くん。
秘密と、好きな人。
そもそも、わたしと世唯くんの関係については、ただのクラスメイトにしかすぎない。
わたしたちが秘密であの部屋で、恋人のようなことをしてるなんて、誰も知らない。
あの部屋にいるときだけ、世唯くんは普段クラスでは見せない顔を見せる。
甘く妖艶な笑みで誘って、理性をぜんぶ失わせるような刺激を与えて、焦らして。
『━━━可愛いよ、いと……』
"いと"って呼ぶ、低くて掠れた声も。
触れてくる体温も。
溶けちゃいそうな甘いキスも。
ぜんぶ、ぜんぶ、好きでたまらない。
だけど、世唯くんはわたしと同じ気持ちを返してはくれない。
ううん、この気持ちを伝えることはぜったいにできない、伝えたくもない。
どうしてか、それは遡ること2ヶ月ほど前の、7月の上旬の頃の出来事。