あなどれないね、世唯くん。
誘惑に、とらわれて。
「はぁぁぁ、やってしまったよ寿々さん……」
「おやおや、どうしたのですか糸羽さん」
「世唯くんと少し揉めた……」
「あらま」
あの日の放課後。
結局、世唯くんの考えていることがわからず何も言わずに部屋を出た。
単純に悔しかったというか、傷ついた。
『いとの好きなようにすればいいよ』なんて言ってほしくなかった。
やっぱり、わたしばかりが想う気持ちが大きくて、世唯くんにはこれっぽっちもないと言われたような気がしたから。
今まであった出来事をさらっと寿々に話した。
最近、藍野くんに絡まれてお昼休みを過ごしていたことと、そのせいで世唯くんと少し揉めたこと。
「ほほーう。藍野ついに動いたか〜!やるじゃん、糸羽の昼休み上手いこと奪うなんてさ」
「うぅ……寿々は藍野くんの味方なの?」
「いや、味方っていうか面白い展開になってきたなーと」