あなどれないね、世唯くん。
まさかこんな形で2人になるとは……。
はぁ、とため息が漏れそうになるのをなんとか堪えながら前を歩く。
このまま何事もなく生物室に着いて、ありがとうとお礼を言って逃げ出したいのが本音。
なのに、生物室までの道のりが異様に遠く感じる。
さっきから廊下を歩いているのに、全然階段がある場所までつかないような気がする。
「なー、花町」
「ひゃ、ひゃいっ…!」
あぁ、やっちゃった。
いきなり名前呼ばれるからびっくりして、思いっきり噛んだし声が裏返った。
「ふっ、何その声。
そんなあからさまに動揺してるって教えてくれなくてもいいけど」
「うっ…藍野くんやっぱりイジワル…だね」
すると、藍野くんが急に足をピタッと止めてわたしの顔を見てきた。
「藍野くんじゃなくて、真尋だろ」
「え?」
「この前呼んでって言ったのに、また藍野くんに変わってんじゃん」