あなどれないね、世唯くん。
とりあえず可愛くっていうのは無理なので、これで許してほしい。
「……仕方ないなー。可愛い花町に免じて持ってやるよ」
ガシガシと頭をかきながら、少し照れた顔をした藍野くんが見えた。
「あ、持ってやる代わりに、これからもぜったい真尋って呼べよ?」
「……わ、わかったよ」
なんて会話をしながら、なんとか階段までついた。
こ、ここまですごく長かった。
あとは降りてくだけなんだけど。
「そういえばさ、お前最近昼休み教室にいない?いつも出かけるところには行かねーの?」
「っ、……べ、別に…気分だよ」
ここ数日だけど、お昼休みは世唯くんに会いに行っていない。
だって会いに行ったところで、世唯くんの気持ちはわからないし。
珍しく……というか、初めて自分から少しだけ距離を置いた。
「ふーん、気分か」
「う、うん」
これ以上詮索されたくないので、急いで階段を降りたらいいことってない。