あなどれないね、世唯くん。
というか、加奈ちゃんの前で世唯くんの名前出さないでよって思う。
ぜったい寿々のことだから、この状況を楽しんでいるに違いない。
「も、もう……いいから寿々は仕事に戻って━━━━」
これ以上、変なことを口走られては困るので、追い返そうとしたら。
「んじゃ、いっこだけ忠告ね」
「な、なに?」
「さっき、千景のこと見かけた」
ドクッと、心臓が大きく音を立てた。
サボっていたのかと思ったのに……。
まさか今日に限ってサボっていないなんて。
「まあ、鉢合わせないように頑張るだわね」
そう言うと、寿々は加奈ちゃんに向けて「じゃあ、ごゆっくり〜」笑顔を振りまいて立ち去っていった。
わたしの頭の中では、万が一2人が会ってしまったら……なんてことばかり考えて気が気じゃない。
まだ2人が知り合いという確証は何もないのに。