あなどれないね、世唯くん。
さっきまでの賑わいから変わり、妙に静かすぎる空間がとても嫌だ。
何か、嫌な予感ばかりが襲いかかってくる。
こんな人が少ないところにもし、世唯くんと鉢合わせでもしたら……。
「糸羽ちゃん?」
ぐるぐると頭の中にいろんな憶測がめぐり、加奈ちゃんに名前を呼ばれてハッとした。
「保健室ここかな?」
加奈ちゃんが保健室と書かれたプレートを指差して言った。
気づいたら保健室の扉の前。
早く手当てをして、人混みの中に加奈ちゃんを連れて紛れてしまいたいと思うわたしって本当に悪い子だ。
ぜったいに、加奈ちゃんを世唯くんと会わせたくない……。
そう思いながら、保健室の扉に手をかけた。
開けた直後、
中に足を踏み入れるのを躊躇した。
こんな偶然、
わたしは求めていなかった。
もしかしたら……
2人が出会うのは
「千景くん……っ?」
必然だったのかもしれない。
神様って
残酷だ━━━━━。