あなどれないね、世唯くん。
「どうせ補習受けなさいって言っても来ないだろうから、補習免除する代わりに花町さんの勉強を見るって条件で来るように言ってあるんだけどね」
「えっと、そのわたしの勉強を見てくれる子って……」
"誰ですか"って聞こうとしたけれど、扉が開く音でそれはかき消された。
すぐに音がしたほうを見た。
一瞬、その姿に見とれるように固まった。
別に彼の姿を見たのは初めてじゃない。
……だって同じクラスだから。
ただ話したことはないし、クラスでも謎めいた雰囲気を持っているからどこか近寄りがたい存在。
「あ〜よかったわ!ちゃんと来てくれたのね千景くん」
篠原先生がニコニコしながら話しかけているのに、千景くんはスルーしてわたしの隣の席のイスをガタンっと引いて座った。
頬づえをついて、つまらなさそうな顔をしながらだるそうにしている様子から、乗り気じゃないことがわかる。
ましてや補習対象になってるおバカの勉強を見る係なんて。