あなどれないね、世唯くん。



名前を呼ばれてドキリとした。

それと同時に、少しだけ安心した自分がいた。

もしかしたら、今の世唯くんの瞳にはわたしなんかはもう映っていないんじゃないか…なんて思ってしまったから。

だけど、そんな安心してる場合じゃない。


「……千景くんと、糸羽ちゃんって
知り合い同士だったの?」


わたしの真横にいる……加奈ちゃんの声を聞いて、安心から一気に不安に突き落とされた。


加奈ちゃんの声が、ほんのわずかだけ……

低くなったような気がしたから……。


今、加奈ちゃんがどんな顔をしてわたしを見ているのかがすごく怖い。


単純に、わたしたちが知り合いなのか、その事実が知りたくて聞いてるだけともとらえられるけど…。

たぶん、ちがう。

だって……。


「珍しいね。
千景くんが女の子のこと下の名前で呼ぶなんて」


まるでそれは、世唯くんのことをよく知ってるといわんばかりの言葉だから。

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