あなどれないね、世唯くん。
無意識に……真尋くんのシャツをギュッと握る。
それに気づいた真尋くんが一瞬だけ肩をピクッと震わせた。
そして、慣れない手つきで背中を撫でてくれる。
世唯くん以外の男の子に、こんな密着して弱いところ、泣き顔を見せたのは初めてだ……。
本当なら、こんなのダメなはずだけど。
今は、1人になりたくない。
嫌でもあの2人を記憶の中から消したい、忘れたいから。
すべてを真尋くんにあずけるように、身を委ねるとあることに気づいた。
わたしの耳元でさっきから、トクトクと速く脈打つ音が聞こえてくる。
一瞬、自分の胸の音かと思ったけど、それにしてはずいぶん速いし、よく聞こえるからたぶん違う。
……ということは。
そっと、耳を真尋くんの胸に当てて聞いてみると、さっきから聞こえてくる音と同じ速さで脈を打っていた。