あなどれないね、世唯くん。
わたしはこんなにいっぱいいっぱいなのに……。
「……やっ」
キスをしながら、服の裾をまくり上げて脱がそうとしてくる器用さ。
けれど、その手が途中でピタッと止まった。
「……っ?」
「……いと泣いてる。やっぱ怖い?」
この涙がなんの涙なのか自分でもわからない。
ただ、怖いとかそういう気持ちよりも…不安のほうが大きいかもしれない。
「こわく……ない……っ」
「そんな強がんないで。身体震えてる」
そう言いながら、わたしの身体に毛布をかけてくれて、そのまま後ろから世唯くんが包み込むように抱きしめてくれた。
「……怖がってる子は抱かない」
「……っ、」
「だから今日はこのまま寝ることにしよ」
なんだか無性にさびしくなった。
そして情けないと思った。
覚悟できてるつもりだったのに、何も経験のないわたしの覚悟なんてしょせん、そんなものだったんだって。