あなどれないね、世唯くん。
それと同時に悲しくなった。
もし、世唯くんと加奈ちゃんがこんな関係だったら……。
わたしは怖がってできなかったけれど、もし加奈ちゃんができていたとしたら……。
やだ……、こんなこと考えたくもない。
身体の向きをくるりと変えて、しっかり世唯くんの身体にギュッと抱きつく。
「……いと?」
もういっそのこと、
こんな気持ちになるのなら、確かめてしまってもいいのかもしれない。
「加奈ちゃん……」
わたしがボソッと名前を口にすると、世唯くんの肩が少しだけ跳ねた。
「……と、知り合い……なんだね」
なるべく不自然にならないように会話を切り出したつもりだけど、突然すぎるにもほどがある。
なんの前置きもなく、いきなり加奈ちゃんの名前を出してしまった。
「……知り合いだったらなに?」
冷たかった。
さっき甘く、優しく声をかけてくれた世唯くんじゃなかった。