あなどれないね、世唯くん。



誰しも、他人に触れられたくないことってある。

きっと世唯くんにとってはそれが、加奈ちゃんとの過去の出来事なのかもしれない。


「か、加奈ちゃんが……世唯くんに会いたがってたような気がした……から」

「……」


「そ、それで偶然文化祭で、しかも保健室で会うから。お互い親しそうに名前呼んでるし、何かあるのかな……って」


「いと……いったん黙って」


あぁ、詮索すればするほど
間違いなく世唯くんが遠ざかっていくとわかっているはずなのに……。


「ま、前に……世唯くんが言ってたよね。
忘れられない人がいるって……それってやっぱり加奈ちゃんのこと……なの?」


どんどん胸の中に抑えていたものが出てきて、止まりそうにない。


「それに、世唯くんはなんでわたしに触れるの?……もしかして、加奈ちゃんの面影を探して━━━━━」


「……いと、いい加減黙って。
それ以上余計なこと詮索するなら俺出ていくから」

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