あなどれないね、世唯くん。



滅多に声を荒げない世唯くんが
珍しく取り乱すように、低い声で遮ってきた。


「……そんなこと、いとが知って何になんの?
俺と加奈の間に何かあっても、今の糸羽にはカンケーないでしょ。……そんなこともわかんないわけ?」


はぁ、とため息をつきながら、わたしを抱きしめるのをやめて身体を起こした。


「わかんない……よ……っ」

わからないから、
わたしたちの関係が曖昧すぎるから、不安ばっかりなのに……っ。


「……今の糸羽に、俺の過去のこと知る理由は何もないでしょ」


そう吐き捨てると、ベッドから離れ部屋を出て行った。

残されたわたしの胸の中はただ苦しいだけ。

現実を突きつけられた、完全に線を引かれた。

甘い時間を求めて、それに浸って、どんどん溺れていたのはわたしだけだった。


目をギュッと閉じると、我慢していた涙が目尻からスッと流れていく。

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