あなどれないね、世唯くん。
自分を落ち着かせるために早く意識を飛ばしたいと思うのに、その意思に反して涙が止まらない。
こんなところにいたら、苦しくて仕方ない。
いま隣に世唯くんはいない。
抱きしめても、触れてもくれない。
それなのに、この空間にいたらまるで世唯くんがそばにいるんじゃないかと錯覚してしまう。
ベッドからも、
自分が身につけている服からも。
ぜんぶから、世唯くんの甘い香りがして、
胸が張り裂けそうなくらい苦しい。
それに、さっきまで触れていた唇の感触や、首筋の刺すような甘い痛みも……ぜんぶ身体に刻み込まれているような気がして。
何度か意識を手放しかけて、眠りに落ちそうになるけどなかなか落ちることはできず……。
そして、世唯くんがわたしの元に戻ってくることもなかった。