あなどれないね、世唯くん。



「彼氏……なんていないよ。
友だちと回ってただけだから」


事実なんだから、何も緊張して話すことはないのに声の震えが出ないか心配で仕方ない。


「へぇ……そっか〜。
糸羽ちゃん可愛いから彼氏いるのかと思った」

チラッと横目で加奈ちゃんの表情を見てみれば、ニコッと可愛らしい笑みを浮かべていた。


なんでだろう……。
普通、側から見たら可愛いはずの笑みが、なぜか少し怖く感じるのは。


「ほら、たとえば━━━━千景くんとか」


ドクッと心臓が強く音を立てて、手に持っていたコップを落としそうになるのをなんとか防いだ。


動揺を悟られないように、ゆっくりコップを自分の口元へと運び、飲み物を口に流し込む。


「な、んで……世唯くん……?」

飲み物が喉を通り、ゴクッと大きく音を立てたあと、声を振り絞るように聞いた。


「んー?なんでかなぁ?」

「っ……、」

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