あなどれないね、世唯くん。
ここでへんに詮索したら、それこそこちらのことも深く聞かれそうだから黙るしかない。
「珍しいなぁと思ってね。
千景くんが女の子のことを下の名前で呼ぶの」
アイスティーをストローで吸いながら、なんともないような顔で言ってくる。
「それ……文化祭の日に、保健室でも言ってた…ね」
「そうそう〜、びっくりしちゃった。
千景くんがわたし以外の子を下の名前で呼ぶから」
グッと胸に刺さった。
"千景くんがわたし以外の子を"なんて……。
まるで、それは自分だけが世唯くんに特別扱いされていたんだと、遠回しに言っているような気がしてしまう。
「そう……なんだ。
加奈ちゃんと、世唯くんは元々知り合いか何かなのかな……?」
「うん、知り合いかなぁ。
あっ、でも知り合いっていうのは違うかも」
「え……?」
「知り合い以上の関係……って言ったらいいのかなぁ?」