あなどれないね、世唯くん。



「卒業したら……堂々と先生の隣を歩けるはずだって、ずっと思ってたのに……。

大人は平気で嘘をついて、別れを選ぶんだって。もちろん、先生にも事情があったのはわかるけどね……」


なんだか、話している感じを聞いていると、加奈ちゃんは本当に先生が好きで、少なくとも結構引きずっていたんじゃないかと思った。



「ぜんぶ……千景くんに言ったの。
先生と終わっちゃったこと……。情けないけど、大泣きしちゃって。

でも、千景くんはわたしが口を開くまで何があったか一切聞いてくることはなくて、ずっと……ただ抱きしめてくれてたの」


世唯くんの優しさ……。

きっとそんな優しさを見せていたということは……。



「それで千景くん言ったんだ……。

先生なんかやめて俺にすればいいって」


ドクッと、心臓が強く音を立てて、
同時に胸が重苦しくなった。

< 195 / 339 >

この作品をシェア

pagetop