あなどれないね、世唯くん。



「曖昧な関係のまま、中学を卒業しちゃって。高校に入ってからはお互い顔も合わせることもなかったの。

ただ、千景くんが進学した先は知ってて、でもどんな顔して会ったらいいかわからないし、どうやってきっかけを作ればいいのかなって」


なんだ……わたしは2人が再会するきっかけを作ってしまったのか。

きっと世唯くんは中学のときからずっと、心の中で加奈ちゃんを想っていたんだ、忘れられなかったんだ。


どれだけそばにいても、けっして自分のほうを振り向かない相手を……。



「そうしたら、偶然糸羽ちゃんに出会って。それで、文化祭呼んでもらって、千景くんに久しぶりに会うことができたから、すごく感謝してるんだ」


「……そ、そっ……か」


感謝なんてしなくていい。
してもらいたくもない……。


2人が再会してしまったことで、ますます世唯くんの心はわたしから離れてしまったのだから。

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