あなどれないね、世唯くん。
「ご、ごめん……ね。
用事思い出したからわたし帰るね……っ」
情けない……逃げることしかできない。
だけど仕方ない。
だって、わたしに勝ち目なんてないんだから。
それに世唯くんがいま誰を想ってるか、わかっているけどそれを受け止めたくない。
完全に、わたしと世唯くんの関係に終わりが見えてしまうのが嫌……だから。
トレイを手に持ち、荷物をカバンの中に雑に押し込んで、その場をあとにしたとき━━━━━━━。
「へぇ……あの程度の子なんだ。
今度は逃げられないようにしてあげないとね」
まさか、残された加奈ちゃんがこんなことを言っていたとも知らずに。