あなどれないね、世唯くん。



目の前の扉に迷うことなく手を伸ばすと、ガラッと音を立てた。


いつもは鍵がかかっているこの部屋は、彼がいるときだけ開いている。


なんでも、この部屋の鍵を特別に手に入れたとか。
どうやって手に入れたのかは教えてくれないけど。



午後12時40分から午後1時までの20分間。



長いようで短いこの時間に、どんどんはまって溺れたのはいつからだろう。


はじめはただの興味本位で近づいた存在。


触れて、触れられて、求めて、求められて。


一度覚えてしまった甘い感覚は何度も欲しくなって、病みつきになる。



密室で、誰も踏み込んでくることがない、甘くて、狂ってしまいそうなひと時が始まるなんて、誰も知らない。


わたしと……世唯くんしか━━━。

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