あなどれないね、世唯くん。



「じゃあ……花町さん、この英文頑張って解いて」


"花町さん"なんて━━━。

ただ名字を呼ばれただけなのに、妙に胸のあたりが騒がしくなるのは、さっきまで至近距離で触れられていたせい。


頬に触れていた手はあっさり離れていき、さっき篠原先生がいたときと同じように頬づえをついて、身体を横に向けてわたしをジーッと見てくる。


隣からの視線のせいで異常に緊張して、正直問題が頭にあまり入ってこない。


そのためプリントは白紙のまま、シャープペンも握ったままで動かない。


「……早速わかんない?」


耳に入ってきた千景くんの声にハッとして、意識が全然違うほうに向いていたことに気づいた。


「あ……わかんない、です」


とても意識して問題どころじゃなかったですなんて言えなかったので、ごまかすにはわからないって言うしかない。


いや、実際問題をしっかり見たところでわからないんだけども。

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