あなどれないね、世唯くん。
「……花町」
「っ……ま、ひろ……くん」
低く、落ち着いた声……。
いつもの制服姿とは違い、私服でかなりラフな格好。
まさか、こんなところで偶然に会ってしまうなんて。
しかもひどく傷ついて、泣いて、自分の感情がうまくコントロールできないって状態だっていうのに……。
「どうした、なんかあった?」
「っ、はな……して」
今は正直誰にもこの顔を見られたくないし、誰とも話したくない。
放っといてほしい。
心配して聞いてくれている真尋くんの優しさを振り切るような言い方をしてしまったけど、今だけは許してほしい……。
「離せない……だろ。
お前いますげー傷ついた顔してる」
手首をつかむ力がグッと強くなった。
「ちょっと来い」
真尋くんに会ったのに、未だに涙は止まらない。
ただ腕を引かれても抵抗する気も残っていなくて、ふらっとした足取りで連れて行かれた場所。