あなどれないね、世唯くん。



「ん、入って」


大きなエントランスを通り、エレベーターに乗り、目の前の扉が真尋くんの手によって開かれた。


今わたしがいるのは、とあるマンションの一室。
さっき真尋くんが鍵を開けたから、おそらくここは……。


「ここ、俺の家。両親と離れて一人暮らししてんの。落ち着くまでここにいればいいじゃん。
人目に触れるところで泣いてたら目立つだろ」


「っ……、」


まさか、こんなかたちで真尋くんの家に来ることになるなんて、誰が予想してただろう。


さっきまで1人になりたかったのに、

1人でいたら、さびしさや悲しさ、嫉妬……いろんな感情に襲われそうで

自分が自分じゃなくなってしまうのが怖い。


だから、真尋くんの優しさに……甘える選択を取ってしまう。


中に足を踏み入れて、
扉がバタンッと閉まった━━━━━。

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