あなどれないね、世唯くん。
「なんで……わたし……なの」
真尋くんは、世唯くんに負けないくらい整った容姿を持っているから。
モテるだろうし、彼女がいたっておかしくない。
それに、女の子たちも放っておくわけないだろうし。
控えめに真尋くんと目を合わせてみれば、射抜くような瞳でこちらを見てくる。
そして、少しの沈黙のあと……。
「……やっぱ、花町は覚えてない?」
「え……?」
「俺、1年の夏に花町と話したことあるんだけど」
1年の夏……。
たしかわたしと真尋くんが話すようになったのは2年のクラス替えがあった時期くらいから。
それ以前は1年のときはクラスは違ったし、話したこともないし接点もない。
「……まあ、覚えてないのも無理ないか。
俺、顔隠したまま花町と喋ってたし」
「えっと、それって……」
すると、真尋くんがわたしの腕を優しく引いてギュッと抱きしめた。
「このまま……聞いてほしい」