あなどれないね、世唯くん。
ふわっと、優しい柔軟剤の香り……。
真尋くんの胸元にちょうど耳があたり、トクトクと少し速く脈打つ鼓動。
「ちょうど夏休み入る前くらい……。
俺、熱中症起こしてすげー気分悪くて保健室のベッドで寝てたとき。
そのとき、初めて花町と話した」
高校1年の夏……保健室……。
思い出そうと記憶をたどるけどなかなかピンと来ない。
「俺、そのとき気分悪すぎて冷やしたタオルを目元覆うように被ってたから、たぶん花町から見たら、俺の顔は見えてなかったと思う。
目元見えなかったら誰かなんて判別できねーだろうし」
あ……でも、そういえば夏休み入る前……。
一度だけ保健室に行ったような気がする。
その日は寝不足のせいで頭が痛くて、薬も忘れていて。
おまけに目眩までするから、保健室でベッドを借りようとしたけど、空いてなくて……。
わたしの学校の保健室は、なぜかベッドが1台しかない。