あなどれないね、世唯くん。



「何か書くもの貸して」

「あっ、どうぞ」


って……今さらだけど、千景くん荷物何もない状態なんだけど。

筆記用具はおろか、カバンすらないことに気づいた。

え、まさか手ぶらで登校してきたの?
いくらわたしに教えるだけとはいえ、カバンくらいは持ってこないの……なんて思っていたら。



「花町さん」

「は、はい…!」


「よそ見しちゃダメでしょ。どこ見てんの」

「あ……ご、ごめんなさい」


いけない、全然集中できてない。


「教えるからきちんと聞いて」

「う、うん」


さっきまで千景くんってちょっとヤバい人なのかもしれないとか思ったけど、勉強を教えてくれる姿勢を見る限り、気のせいだったのかな…なんて。



「長文は一気に読み込まないで、区切り入れて少しずつ読んでいけばいいから」


「あ、なるほど…」


千景くんがわかりやすく、真面目に説明をしてくれる。やっぱり頭がいいだけあって、教え方も上手。

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