あなどれないね、世唯くん。
『いと……』
甘えるような……少し低くて、でも名前呼ばれるたびに胸がギュッとして……。
違う……。
わたしが求めてるのは、この人じゃないんだ……。
ハッとして、
とっさに顔を下に向けて口元を手で覆った。
「ご…めん、なさい……っ」
心のどこかでこの流れのまま、流されそうになった自分がいなかったといえば嘘になる。
でも、わたしの中にいる世唯くんが全然消えてくれなくて……。
「……謝んなくていいよ。
俺のほうこそ、勢いでしそうになってごめん。
花町の気持ちちゃんと聞いてもないのに」
そう言うと、わたしから少し距離を取った。
「やっぱ人の弱ってるところにつけ込むのってよくないし、サイテーだよな」
「真尋くんは……最低なんかじゃない…よ」
わたしの気持ちを考えてくれて、無理やりすることなく止まってくれたから。