あなどれないね、世唯くん。
視線をそちらに向けると、予想していた人物が一瞬驚いた顔をしてこちらを見た。
「あ……っ」
姿を見つけた途端、声が少し漏れて同時になぜか椅子から立ち上がってしまった。
お互い固まったまま。
数十秒、まるで時が止まったかのように動かない。
ただ、視線だけはしっかりお互いを見つめる。
あぁ……やだ。
世唯くんと目が合うだけで、見つめられるだけで、胸のあたりが騒がしくなって、熱くなる。
叶わないとわかっているのに、やっぱりまだ世唯くんへの気持ちは全く捨てられていない。
「……あ、の……篠原先生いま用事あっていなくて……。補習わたしたち2人だけみたいで。
そ、それで……しばらく2人でプリントやっててって」
沈黙が嫌で、必死に今の状況を説明した。
すると世唯くんは何も言わずにこちらへ近づいてきて。
「……ここ、座ればいい?」
と聞いて、わたしの隣のパイプ椅子を引いた。