あなどれないね、世唯くん。
「あ……う、ん」
さっきからぎこちない話し方ばかりになる。
久しぶりに会話を交わした。
すぐ近くに世唯くんがいるせいで、無駄に心臓がいつもより速く動く。
「これ……プリント。
途中で別の先生が来てくれる予定……らしいから」
世唯くんの顔は見ずに、手元にあるプリントに視点を置いて、そのまま隣にいる世唯くんに渡す。
プリントを渡した手を引こうとした。
でもできなかった。
「っ……」
わたしの手よりずっと冷たい大きな手が、わたしの手をつかんで離してくれない……から。
世唯くんの行動はいつも読めない。
なんで、いきなり触れてきたのか。
言葉を発してくれないから余計わからない。
ゆっくり……伏せていた顔を上げると
いつもと変わらない世唯くんの整った顔があった。
相変わらず……綺麗で澄んだ黒の瞳が、わたしを射抜くように見てくる。