あなどれないね、世唯くん。



「……やっと俺のほう見たね」

「え……?」


「さっきから俺のほう見ようとしないから」

「っ……」


そんなの見れるわけない……じゃん。
どうしてそんな、前と変わらないような感じで接してくるの……?


「やっと、糸羽の顔見れた」


なんなの……なんなの……っ。
わたしがどんな気持ちでいるか知らないくせに、またそんなこと言って……。


前に世唯くんの家に泊まった日。
過去のことを聞こうとすれば、冷たくあしらわれて、それ以上な踏み込ませてくれなかったのに。


……わたし、知ってるよ。

先生と内緒で付き合ってた加奈ちゃんのこと、昔好きだったこと。

それは、今も変わらずなんじゃないの……?


それなのに、どうしてわたしにそんなことを言うの?


次にわたしが言葉を発しようとしたら……。


「おーい、補習2人組ちゃんと課題やってるかー?」

タイミング悪く、入り口の扉が開き、
中に入ってきた向井先生。

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