あなどれないね、世唯くん。
ハッとして、目線をそらし自分の手で唇を覆った。
これは、キスしないでというサイン。
今まで熱くて仕方なかったはずなのに、心だけが一気に冷え切った。
「……いと」
わたしの髪がゆっくり前で揺れて、それをすくい上げるように世唯くんが耳にかけてくる。
胸がギュッと……握り潰されるくらいに苦しくなって、その場から立ち上がり準備室を飛び出した。
外に出てみれば、さっきまでの熱さが嘘のように一気に冷めていく。
また、2人が今も接点があることを目の当たりにして、とことんついてない。
身体からどんどん熱が奪われていく。
冷たい空気が肌に刺さる。
ただ……ツーっと頬を伝っていく涙は、
流れる空気とは正反対で、熱かった……。