あなどれないね、世唯くん。



怖くて、抵抗しようと思っても声が出てこないし、かわりに涙しか出てこない。


「……や……だ……っ」

やっと振り絞って出た声は、か細くて意味がない。


「うわー、涙目でそんな顔されたらなんか変なスイッチ入っちゃうよなー」


肩に力が入って、おびえることしかできない。

逃げ出したいのに力なんて入らない。

誰も助けてくれない。
そもそもここにわたしが連れて行かれたことを誰1人として知らないのだから。

助けを願うだけ無駄……。


ブラウスのボタンが上から1つずつ外され、あっという間にすべて外れた。

「へー、綺麗な肌してるね」


なんて言いながら、身体を撫でるように軽く触られてギュッと目をつぶる。


この手が世唯くんだったら……。

わたしに触れるのは世唯くんだけがいい……っ。


そう思って、世唯くんの顔を思い浮かべて。


「せ……い…くん……っ」


届くはずのない声で、名前を呼んだと同時。

ドンッと鈍い音が聞こえてきた。

< 246 / 339 >

この作品をシェア

pagetop