あなどれないね、世唯くん。
「……加奈。これどういうつもりなわけ?
糸羽に何してんの」
中に入ってきた世唯くんは、怒りを抑えながら加奈ちゃんにそう言うとわたしがいるソファにきた。
そして、わたしの姿を見るなり一瞬ホッとした顔を見せたかと思えば、
すぐに自分が着ていたセーターを脱いで、包み込むようにそれを被せてきた。
そしてそのまま、わたしを抱きしめた。
「いと……無事だった?」
優しく、怖がらせないように聞いてきてくれる。
近くで身体に触れてわかった。
世唯くんの息が少し乱れていて、身体も熱い。
「……怖い思いしてない?」
大丈夫という意味を込めて、首を縦に振る。
それでもまだ少し震えが残っているから、それを和らげるように世唯くんが抱きしめる力を強くしてくれる。
「千景くんってここまで糸羽ちゃんのために必死になるんだね」
加奈ちゃんが何ともなさそうな声でそう言った。