あなどれないね、世唯くん。



最初の頃は特に気になってもいなかったらしいけれど、先生とのことで悩んでいる加奈ちゃんを見て、次第に惹かれていったらしく……。


堂々と付き合ってると言えない苦しさを抱えた加奈ちゃんを……自分が支えたい、そばにいてあげたいと思っていたそう。


ただ、加奈ちゃんの気持ちは世唯くんのほうに向くことはなかった。

それでも諦めきれずに、卒業してから高校に入っても、世唯くんの心の中にはいつも加奈ちゃんがいた。


「いい加減、加奈のことなんて忘れたいって思うのに、なかなか諦めがつかなかった。

俺を選べば……加奈の笑顔を守ることができたのにって思うばかりで、他の子なんて眼中にもなかったから」


そして、そんな想いを抱えた世唯くんと、わたしが夏休みで急接近したこと……。


「正直、夏休みの補習の面倒見るなんて断るつもりだったよ。

ただ……そこにいたのが糸羽だったから、引くに引かなかった」

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