あなどれないね、世唯くん。



「でも、加奈を忘れられない自分と、糸羽に惹かれてる自分がよくわからなくなった。

自分の気持ちが誰に向いてるか、自分でわからないってどうかしてるって思った」


世唯くんも、世唯くんなりに思うことがたくさんあって、悩んでいたんだ……。


そんなとき、加奈ちゃんに再会して。
会ったときは正直驚いたみたいで、もしかしたらまた加奈ちゃんへの気持ちがより一層強くなるかもしれないと思ったらしい。


だけど……。


「加奈と再会して、案外……なんともなかった自分にいちばん驚いた。

そのときの段階で、俺の気持ちは完全に糸羽に向いてたのかもしれない…ね」


優しく笑いながら、わたしを見てくる。


「ただ、自分でも気持ちの整理がうまくできなくて、糸羽に対する気持ちがはっきりわかんなくて。

冷たくしたりして、突き放してごめん……」

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