あなどれないね、世唯くん。



「お昼休みまでおあずけってこと?」

「そ、そういうこと……です」


お願いだから、もう折れてくれないと本当に遅刻しちゃうから。


「……まあ、楽しみは先に取っておくのもいいよね」

フッと笑って、そのままわたしの上から退いてくれたかと思いきや。


「でも待ちきれないから、ちょっとだけ」

そう言って、チュッとリップ音が鳴った。

「っ……!」


も、もう……っ。
世唯くんといたら心臓がいくつあっても足りない。

下手したらドキドキしすぎて酸欠で倒れちゃうんじゃないかってくらい。


そんなこんなで、なんとか家を出て教室に着いたのは始業のチャイムが鳴る30秒前。

かなり滑り込み……。


そして1時間目の授業が始まり、2時間目が移動教室なので寿々と一緒に廊下を歩く。


「いやー、にしてもあんたたちよくもまあ、毎日遅刻すれすれでご苦労様なことで」

寿々がやれやれと言う口調で話す。

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