あなどれないね、世唯くん。



開けた瞬間、さっきの暑さから一変して、冷たい冷房の風がブワッと吹いてきた。


そして……目の前には……



「……あー、いとだ」


口角を少し上げながら、目を細めてこちらを見て笑う世唯くんの姿。


狭い部屋にあるソファが世唯くんの定位置。


真正面から世唯くんの顔を見つめると、相変わらず綺麗で、近づきにくいオーラを放ってる。



一度も染められたことがない、艶のあるサラッとした真っ黒の髪。

前髪から垣間見える、捕らえたら離さないような、黒の瞳。

フェイスラインがすっきりしていて、肌も男の子とは思えないくらい綺麗で、薄い唇がとても色っぽい。

着崩した制服から見える鎖骨も魅力的。



「いーと?」


「あ……っ」


いけない、世唯くんの顔を見たまま入り口に立ったままで、固まっていたことに気づかなかった。


あわてて扉を閉めて、壁にある時計で時間を確認するとお昼休みが終わるまであと15分。

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