あなどれないね、世唯くん。



なんだか今はとても甘えたい気分。
風邪のときは、誰かに甘えてもいいような気がするから。


「手、つないでてほしい…な」

お願いって瞳で見たら、
あっさり手をつないでくれた。


「これでいい?ちゃんと寝ないとダメだから」

「ど、どこにも行かないで…ね」


「いとが寝るまでちゃんとそばにいるよ」

世唯くんがすごくすごく優しい。
今ならどんなわがままを言っても聞いてくれそう。

それに、風邪を理由に自分が積極的になれそうな気がする。

だから。


「せい、くん……?」

「今度はどーしたの」


「キス、してほしいな……って」

なんだかこのまま深い眠りに落ちるのが少し怖くなった。

だから、世唯くんに触れててほしいって、近くにいるって感じるようにしてほしくなっちゃって。


「ダーメ。
風邪ひいてんだから、わがまま言わないの」

どうやらなんでもお願いを聞いてくれるわけではなさそう。

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