あなどれないね、世唯くん。
「それに、糸羽の体調のこと気にしてくれてね。あなたが手つないだまま離さないから、千景くんずっとそばにいてくれたのよ?」
「えっ、そうなの…?」
「そうよ〜。遅くなるから帰って大丈夫よって声かけても、糸羽のそばに少しでもいてあげたいって。
もし糸羽が目覚めたときに、手つないでなかったらさびしがると思うからって」
たしかに目が覚めたとき、さびしかった。
わたしがさびしがることも、わかってたんだ。
「結局、糸羽は起きなかったから。夜の10時くらいまでだったかしら。ずっと糸羽のそばにいたのよ?」
きっと、目を覚さなかったのは、そばで世唯くんの温もりを感じて安心していたからなのかもしれない。
「さすがに夜になっても起きなかったから、もう朝まで目は覚めないと思うわよってお母さんが言って、それで帰っていったの。
もちろん夜遅くなっちゃったから、お父さんが車で家まで送っていったけどね」