あなどれないね、世唯くん。



もうお風呂に入ったかな、と思い何のためらいもなく脱衣所の扉を開けたら。

「あ、着替えそこ置いといて」

「っ!?」


まだお風呂に入るどころか、上を脱ぎかけている世唯くんを目の前にして、思わず手に持っていた部屋着を落としてしまった。


「あっ、うっ……」

あわてて拾い、目のやり場に困るので視線をひたすら床に向ける。

な、なんでしょう、この状況……!


「いーと?」

「ひぃ……っ!」

わざとなのか知らないけど、顔を近づけて耳元で喋ってくるし、目の前の世唯くん上半身裸だし……っ!


真っ赤であろう自分の顔を手で隠しながら、世唯くんがいるほうに背を向けると。


「なーに、意識してんの?」

後ろから壁にトンッと手をついて、わたしから逃げ場を奪う。


「して、ない……」

「じゃあ、こっち向いて?」

イジワルな声が鼓膜を揺さぶってくる。

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